A&D Market Research Companies調査
航空・防衛業界の市場調査を行う企業について調査した。
サマリ
- 航空・防衛は特にプロダクトのライフスパンが長い業界であり、市場調査が提供する市場予測がサプライヤ企業などの経営方針決定の重要な参考資料となる。
- 最近の市場調査は、従来のようにレポートを購入するだけでなく、サブスクリプションでレポートやデータベースにアクセスできるものが増えてきている。
- 航空・防衛業界のマーケットリサーチを専門に行う企業や、当該業界をカバレッジの一部として行う企業がいる。欲しい情報が手に入るのであれば、Forecast International社のような専門業社が木目細かい情報・サポートを提供できると考えられる。一方、他の業界のレポートを同時に購入する可能性がある場合などは、手広く市場調査を行う企業も検討に入れると良いだろう。
- 市場調査の結果を最大限に活かすため、企業のリソースを鑑みて不足する部分を補うようにレポートの翻訳・解釈やカスタマイズ、追加調査といったサービスを上手く活用することが推奨される。
- 業者を横断してレポートを検索することのできるオンラインマーケットもあり、これらマーケットの提供者も独自調査などのビジネス領域に進出しつつある。
市場調査の市場
statistaによれば、航空・防衛に限らず一般に市場調査というカテゴリで見ると、その市場規模は全世界で44.5bUSDを超え、その半数近くを北米が占めヨーロッパがそれに続く形である。市場調査は顧客の嗜好や憂慮を知るために良い手段であり、マーケティングの実施や新製品の開発・既製品の改良を決定する際に重要な参考資料となる。同時に、競合他社の業績と比較することで、上手く市場を獲得しているかといったレビューにも活用できる。欧・米ではその重要性が認識され、かつ独立した市場調査会社のサービスを利用することが定着していると見られる。市場調査というと一般消費者向けというイメージが強いかもしれないが、B2B向けのものも各業界に向けて多数存在し、以下のように航空・防衛業界向けのレポートを発行している企業がある。
市場調査会社
ここでは幾つかの市場調査会社について紹介する。
航空・防衛特化型
以下の企業は航空・防衛業界に特化した調査を行いレポートを発行している。傾向として長年の実績があり、充実したデータ・レポートとブティックならではの細やかなサポートが期待できる。
1973年に元米空軍将校によって創業され、コネチカットに本拠地を置く。1989年のDMS Inc.など複数の買収を経て、現在のような航空・防衛、パワー・エレクトロニクス関連のプラットフォームやシステムをカバーする製品ラインナップが整った。18名のアナリストを擁し、9つのカテゴリに含まれるレポートと、Platinum Forecast System 4.0と呼ばれる15年間のフォーキャストを生成するシステム、およびコンサルティングサービスを提供している。レポート購入者には毎月アップデートが送られてくる。Aviation WeekやForbsなどにも記事やデータを提供している。
1987年に創業、バージニアに本社を置く。9つのカテゴリでレポートを販売し、さらに個別企業や機体タイプごとのレポートも安価に提供している。9名のアナリストからなる。
一般型
このグループに入る企業は、航空・防衛業界を調査対象の1つとして有しているものである。2000年以降に設立され急成長した企業が多く、豊富なアナリストを持ち、それぞれに得意とする分野がある。航空・防衛業界のレポートやサポートの質については、個別に検討する必要があるだろう。
2013年に設立し、オレゴンとプネにオフィスを構える。11の業界について企業プロファイル、業界レポートなどを提供している。サブスクリプションモデルで全てのレポートにアクセスすることが可能なKnowledge Treeというサービスもあり、Fortune 500の企業のうち150以上が利用しているという。航空・防衛については本年は2つのレポートがある。
1961年に設立し、テキサスを本拠地として世界中にオフィスを展開するコンサルティング・市場調査会社。360°リサーチという業界動向を示したレポートでは、テクノロジー関連を中心とした11の業界・領域をカバーし、従来の市場調査に加えて新規ビジネスモデルや破壊的テクノロジー、エマージングマーケットといった側面をカバーしている。航空・防衛向けに35本のレポートが本年発行されている。
2003年にロンドンで設立され、現在は15の業界レポートを発行し、100以上のFortune 500を顧客に持つという。本年発行された航空・防衛向けのレポートは83本ある。特に新興市場・テクノロジーに注力して500名以上のアナリストが情報収集に当たっているという。全てのレポートにアクセス可能なプラットフォームは、14日間無料トライアルが可能である。
2010年に設立されプネを拠点とする。本年発行された航空・防衛向けのレポートは68本ある。Fortune 1000のうち80%が利用するという。16の業界レポート・プラットフォーム・コンサルティングを提供する。850名のアナリスト・SMEs (Subject Matter Experts) が情報の収集に当たっている。
2007年に設立され、テキサスに拠点を置く市場調査・コンサルティングの企業。7つの業界についてレポートを発行し、航空・防衛向けには本年に5本ある。データベースであるLucintel 360は14日間のフリーデモが利用できる。
2014年に設立されカリフォルニアに拠点を持つ。特にテクノロジーに特化した13の業界のレポートがある。3Dプリンティングやロボティクスを1つの独立した領域として扱っている。100名を超すアナリストおよびSMEsが情報収集に当たる。航空・防衛業界の2018年以降を扱うレポートは13本見られる。
Global Industry Analysts, Inc.
1987年から事業を行ない、31年の歴史の中で16,000社以上にサービスを提供してきたという。カリフォルニアに本拠地を置く。4000人近くいるリサーチパートナーシップに参加する外部企業のエグゼクティブにも支えられている。レポートの地理的カバレッジとして欧州・米国に続いて日本が挙げられている点が興味深い。30近くの業界を分析し、航空・防衛業界向けには本年発行の9本のレポートと、多数の企業分析レポートがある。
オンラインマーケット
参考までに、上記の企業が発行するレポートを横断して検索・購入できるサイトがある。以下はその一例である。これらのマーケットを提供する企業の中にも、独自の追加調査を行ったり、2次調査を継続して行っているものもあり、独立した市場調査会社とのビジネス領域が重なりつつある。
所感
市場調査は市場が大きく、レポートや調査代行を行う企業が無数にあるので圧倒されてしまうが、上記のようなカテゴリに沿って整理してみるとどこに当たるべきか少し道筋が見えてくるかもしれない。また、自社のビジネスが航空・防衛のどのシステムに当てはまるかによって実際には候補のリストは短くなるだろう。希望する情報と近いレポートがあればそれをカスタマイズして欲しいデータとしてもらうことも可能だ。
一方「(予算消化のために) 新規事業の参考という名目で数百万円分のレポートを購入し誰も読まない」という状況に陥らないように、正しく活用できる部署・人員、あるいはそれが不足している場合は適切なサポートが受けられるかどうかをしっかりと確認した上で購入することが推奨される。当たり前だが、これらのレポートは何らかの問いに対する答えを導くための資料であるから、問いを明確にしてから探すことが必要だ。
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